第1章 二人は一緒
「さっきの方はお母様じゃ…」
「えぇ?さっきの?」
紅茶とクッキーを持ってきてくれた着物の女性だ。
「あれは女中さん。お手伝いさんだよ。僕が帰ってきたら飲み物用意してくれるからね。」
「……。」
住む世界が違う。
私の常識はきっと通用しないだろうから、下手なことは言わないようにしようと、私は思った。
「あの…荷物とか自分の家に取りに行くことは可能ですか?」
「んーーー。」
五条さんは顎に手をやり考えていた。
「僕が最も信用する人に近いうちに話すからさ。それからかな。僕の心臓を他人が握ってると、呪霊達に流れてるのかまだわからない。流れているとしたら、もう一人二人戦える呪術師がいた方がいい。」
何を言ってるのかよくわからない。
呪霊と呪術との違いも申し訳ないけどまだわからない。
でも、敵が襲ってくるかもしれないからみんなで行動しようってことはわかった。
と言うことはーーー…明日のグッズ販売は諦めた方が良さそうだ。
はぁ。
私は小さくため息をついた。
別に彼に対してではない。
自分の不運に対してだ。
あの時、話しかけられたのが私じゃなかったら。
あの時、ネックレスを受け取らなかったら。
あの時、五条さんに声をかけなければ。
「巻き込んじゃってごめんね。」
「あ、いえ。五条さんのせいじゃ…運が悪かったと思ってるだけで。」
五条さんを狙ったものかもしれないが、声をかけたのは私だ。
「お詫びにちゃんとキミを守るから。最後呪いをかけたやつを祓ったらちゃんと元の生活に戻してあげるからね。」
目を隠したままでもにっこりと笑っているのがよくわかる。
さっきの綺麗な目を思い出しながら私も元気なく笑った。