第6章 二人?でアオハル
私は悟さんの後ろを歩いて、高専の小さな会議室の様な部屋に来ていた。
「…ごめん、。」
「えっ!?」
まさか謝られるとは思わなくて、声をあげてしまった。
「僕が離れてしまったから。」
「確かに怖い人だったよ!え、人なのかな?いやでも、本当に私のことを教えてくれただけなの!」
「そんな優しい奴なわけがないだろ。」
まさにその通りなんだけれども。
「私が平安の人の子孫?みたいなの!だから、話をしてくれたの。」
「が?」
黒いソファに隣同士で座って話をした。
あの両面宿儺に教えてもらったことを。
「うん。私には“阿曽巫女”の血が流れてるって。」
「…それだけじゃないんだろ?」
「私のあの呪霊を消してしまうのは、“浄化”の力があるからだって。」
「…浄化?」
聞いたことないな、と悟さんは眉を寄せた。
「その阿曽の子孫だから、呪力の訓練しても意味ないよって。私の血の力だからって。あと…何言ってたかな…、あ、そうそう。呪霊も浄化できるやつと出来ない呪霊もいるって。呪いの種類によるんだって、言ってた。」
「…。」
悟さんは私の顎に手をやり、小さくついてた血を親指で拭った。
「そんな何にもなしに教えてくれるような宿儺じゃない。何を引き換えに教えてもらった。」
低い声だ。
私は正直な話してしまおうかと思った。
相手が相手だし、別に私に下心はない。
キスをされたというより、唾液を取られた。というだけだ。
「……っ。」
『これは契約だ、小娘。』
口を開きかけたが、爪で押された下唇が痛く、うまく動かない。
ーー…宿儺の仕業だ。
話せない。
「…っ。暇つぶしだって。」
「暇つぶし?」
言えるギリギリのところを私は話した。
「阿曽の子孫だから、同じ様な感じで話してたから…。情報は小出しにして、その度に相手にしろって。」
「…。」
悟さんはサングラス越しに私をじっと見つめた。
話せないけれど、嘘は言っていない。
小さな会議室の中で、しばらく沈黙が続いた。