第13章 *君のせい*〜小堀浩志〜
『バシャンッ!』
派手な音を立てて、あたしはプールに飛び込んでいた。
思っていたよりも最初はぬるかった。
日に当たったからだろう。
でも、段々冷たくなってきて…
…ああ、このままここにいたら、死んじゃうかなぁ…
どうしよう…でももう、息も苦しいし、意識が…
「………!…………!?」
遠くで声が聞こえる。
浩志の声だ。
朦朧としていた意識が、その声に反応した。
力が抜けかけてた体の、最後の力で、なんとかタイルを蹴った。
水面から顔を出すと、やっと息が吸える。
「ぷはっ!はぁ…っはぁ…」
「遠野!」
差し出された手を握ると、引っ張られて、プールから抜け出す事が出来た。
そんなに疲れた気はしないのに、息が乱れる。
浩志…。
多分、あたしの落ちた音を聞いてすぐ駆けつけてくれたんだろう。
あの声が届いていなければ、今頃あたしは、取り返しのつかない事になっていたかもしれない。
あたしが浩志にありがとうと言おうとすると、
「遠野、良かった…。俺…っ」
震えた声が聞こえて、浩志に抱きしめられた。
あたしの存在を確かめるように、ぎゅうっと少し強めに。
いつもなら包み込むように肩を抱くのに対して、今回は全身から震えが伝わってきた。
「浩志、ごめんね…」
「違う…遠野は、悪くない…」
あたしのせいだよ。
浩志を不安にさせて、辛い思いさせて。
お願いだから、もうそんなに悲しそうにしないで。
…もう、泣かないで。
「…ありがとう」
浩志に触れた肌が温かくて、あたしも浩志を抱きしめた。
顔は見えないけど、浩志が微笑んだような、そんな気がした。