第13章 *君のせい*〜小堀浩志〜
元々は、あたしの隣の席の人が原因だった。
今日日直のあたしは、ペアで日直をやる予定だった隣の席の人が休みな為に、一人で日直の仕事をこなしていた。
ちなみに言うとそいつ、北海道に旅行に行ったらしい。
「帰ってきたら回し蹴りを決める」と、あたしは(友達曰く)すごく爽やかな笑顔で宣言した。
何から何までやって、やっと解放されると思った放課後。
副担任の美人教師は言った。
「遠野さん、プール掃除お願いね」と。
それがあのオヤジ担任なら即断るが、何しろあの天使様だ。
逆らいようがなかった、というよりかは逆らうのはあたしの良心が許さなかった。
こんな美人様のお願いを断れるものか。
あたしはその言葉に、「はいっ!今の三倍綺麗にして来ます!」と、自らハードルを上げつつ了承した。
そして、「よーし、頑張るぞー!」と意気込んでいたところに、教室前で浩志に会い、話の流れで事情を説明したら、手伝うと言ってくれて、今に至る。
全ての原因は、あの北海道でエンジョイしてる馬鹿野郎によるものだ。
決して、副担任に頼まれた時見た目で判断し了承したあたしは悪くない。
悪くない。
「ごめんね浩志…迷惑かけて。浩志も部活あるのに。」
「俺から言った事なんだから、遠野が謝らなくていいよ。」
浩志は、ちょうどビート板を整理するあたしの近くで掃除をしていたらしく、すぐ近くに来て頭を撫でてくれた。
それでも消えない、浩志に迷惑をかけたという罪悪感。
だからと言ってあの先生の頼みは断れないのは、今でも分かり切っていた。
やっぱり、手伝いを断って、一人でやれば良かったな…。
「…遠野」
「ん?」
撫でられていた手が離れて、振り返ると、頬に柔らかいものが触れる。
それが何か分かった途端、彼が触れた方ともう片方の頬、顔、耳という順番ですぐに赤みが広まった。
「気にしないで。俺は遠野といたいだけだから。」
「っ…う、ん…」
顔の熱を下げようと、頬を抑える。
浩志の優しさに、ドキドキして、胸が痛いくらいだった。