第11章 *恋の計算*〜伊月俊〜
『ピンポーン』
日曜日。
約束通りの時間に、インターホンの音が聞こえた。
遠野だと分かってるけど、側にあったので、インターホンに出る。
はっ!
側にある蕎麦屋、キタコレ!
「はい。」
『あ、伊月先輩、こんにちは〜』
このほわほわした感じの喋り方は、遠野だ。
この前の落ち込みようはどこへやら、インターホン越しでもニコニコしてるのが分かる。
「ん、今行く。」
『はい!』
受話器を元に戻し、ドアを開ける。
目が合うと、ニコッと笑顔を向けてくれる遠野。
「今日はよろしくお願いします!」
「あはは。こちらこそ。」
礼儀正しいなぁ、と思いつつ、その笑顔はいつも通りだと思った。
「取り敢えず、入って。教科書、重いでしょ。」
遠野は、念のため、と言って中学の時の教科書も持ってきたらしい。
見てるだけで重そうだった。
「はい…。重くないって言ったら、嘘になりますね。じゃあ、お邪魔しまーす。」
遠野を家に入れて、勉強の準備をする。
「よしっ!頑張るぞー!」
「ははっ、元気いいね。」
「どうせやるなら、楽しんでやらないと損ですよ!」
「そうだね。じゃあ、始めよっか。」
遠野は、俺の言葉に「はいっ!」と元気に返した。