第25章 *Happy Birthday 10/2*〜小堀浩志〜
「ふふ、本当久しぶり。一ヶ月くらい会ってないよね?」
そう言いながら、先輩はテーブルにコップを二つ置く。
両方とも中身は緑茶だ。
「そうですね。…すいません、何度か言おうか迷ったんですけど、先輩、大学生だし忙しいかなと…。」
「うん、大学生は忙しいよ。それに私、最近書く時の姿勢悪くなったみたいで、ちょっと肩痛い。」
「き、気をつけてください。」
そのせいで、視力も両目Aから最近両目Bになってしまったらしい。
…体調管理はちゃんとできてるのか、とか睡眠時間はとれてるのか、と色々心配してしまう。
よく人に言われるけど、やっぱり俺は心配性なのかもしれない。
「でも、浩志君が会いたいって言ってくれたから、まだまだ頑張れるかも。」
「だめですよ、無理しないでください。」
「ん…そうだね。」
くたっと俺に寄りかかる先輩は、やっぱりどこか疲れ気味だった。
「あ、そだ、浩志君今日誕生日でしょ?」
「…!は、はい…っ」
覚えててくれたんだ…と思うと、嬉しくて頬が緩む。
けど、遠野先輩は、何故か申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめんね、プレゼントはないんだ…。けど、いつも私が甘えてるから、たまには甘えてくれていいんだよ?」
先輩は大学生で毎日忙しいし、次いつ会えるかも分からなかった。
だから、そのことを特に残念と思うこともない。
それでも甘えていいと言ってくれる先輩は優しいし、やっぱり大人だと思った。
年の差は一つだけど、先輩は俺とは違う。
その一年分の差が、やけに大きいものに感じた。