第25章 *Happy Birthday 10/2*〜小堀浩志〜
深呼吸を三回して、緊張を和らげる。
「…よし。」
遠野先輩からの返信は、『いいよ、会おう。』だった。
話し合った結果、俺が遠野先輩の家に行くことになり、今は先輩の住んでいるアパートの部屋の前。
勇気を出してインターホンを押す時は、何故か目を瞑ってしまった。
『ピンポーン』
『はい、どちら様ですか?』
インターホン越しの先輩の声が、俺の表情を更に強張らせる。
「こ、小堀…です。」
『あ、浩志君。今鍵開けるね〜。』
ぼそぼそと言ってしまったので聞こえたか不安だったけど、ちゃんと聞こえたようで、すぐに鍵を開ける音とドアが開く音が聞こえた。
「久しぶりだね。」
ドアの奥から見えたのは、一年前には何度も見てた優しい笑顔。
その表情に少し緊張が和らぐも、
「お、お久しぶりです…。お邪魔します。」
やっぱり、表情は強張ったままだった。
「そんな緊張しなくても、私しかいないよ。」
どうぞ、と言って出入り口の端による遠野先輩。
ぺこりと頭を下げて、部屋の中に入った。