第25章 *Happy Birthday 10/2*〜小堀浩志〜
「あの…先輩の傘はどうするんですか?」
「私、二年の妹いるから。入れてもらう。」
「…ありがとうございます。」
再度お礼を言うと、そんなに気にしなくていいよ、と笑ってくれた。
「あの…クラスはどこですか?」
「3年A組。昼休みは教室にいるから、呼んでくれたらすぐ気づくと思うよ。」
遠野先輩は、クラスを聞いただけで、丁寧にそう教えてくれた。
何から何まで感謝してばかりの気がする。
それはきっと、遠野先輩が優しいからだ。
「じゃあ、明日の昼休み、返しに行きます。」
「うん。…また明日ね、小堀君。」
そう言って微笑んだ顔は、今でもハッキリと覚えている。
遠野先輩が好きだと気づいたのは、それから一ヶ月ほど後。
告白したのは去年の春。
付き合うようになって、楽しかった二年生が終わり、大学生と高校生になって思うように会えなくなってしまった今年。
色々あったけど、今でも俺はどう接するべきなのか分からず、時々戸惑ってしまう。
会いたい時も、「ごめん、その日は無理」と言われるのが怖くて、自分から言い出した時はなかったかもしれない。