第3章 口減らし
翌日、ハンジは避難民たちが集まる広場に姿を現した。
肩を寄せ合い、疲れ切った様子の人々。広場全体に漂う重苦しい空気は、希望を失った避難民たちの心情をそのまま映し出しているかのようだった。
ハンジは周囲を見回し、昨日話題になった少女、サクラを探していた。
「えー、ゴホンッ。サクラ・ダンネベルクはいるかなー?」
人々の視線が一斉にハンジに向けられる。そしてその中から、一人の少女が人々を掻き分けて前に出てきた。
「わたしです。」
控えめに応じた声の主は、小柄で華奢な少女だった。近づいてみると、彼女の幼さがさらに際立つ。それでもその眼差しは他の希望を失っている避難民と違うように見える。
――こんなに幼い少女が、巨人の恐怖に支配されていないだけでもすごいよ。
ハンジは心の中で嘆息しながらも、優しく微笑んだ。
「君が、サクラだね?」
「はい。」
「そうか。少し話があるんだ。私と一緒に来てくれる?」
サクラは静かに頷き、何も言わずにハンジについて歩き始めた。
ハンジは改めて彼女を近くで見ながら、その姿に胸を締め付けられる思いだった。
――こんな少女を戦場に送らなくてはいけないなんて、あまりにも惨すぎるよ……。