第11章 偽りの表情
「辰馬…。」
今、一番会いたかったのか、はたまた会いたくなかったのか、わからないけど、とりあえずこれは辰馬だ。
「緑はん、どうして食堂にこんのか?酒くらい飲むき!」
「…今はそんな気分じゃなくてね。」
ニコッと笑ってみせた。泣きたくて仕方ないのだ、今は一人にしてほしい。
すると、辰馬は少し機嫌が悪い顔をした。
そのままどかどかと私の部屋に入ってくる。
「ちょ、何よ、辰馬。」
「こういうときは一人でおちゃ駄目じゃ!」
「いいじゃない!一人でいたいの!」
少し叫んで見せた。
辰馬はため息をついた。
「…緑はん。」
少し呆れているのだろうか。
何にため息をつかれ、呆れられているのかわからない。
「…何よ。」
「おんし、本当に学ばんのう。」
!な!
「何を学んでないって言いたいのよ!!」
「学んでない。なんも。」
そう言って、少しずつ近づいてきた。
私は少し後ずさりする。
「わしらは仲間じゃ。じゃけん、仲間が悲しんどったら、寄り添うのは仲間の役目じゃ。仲間拒んどったら、緑はんどうなるんじゃ。」
辰馬の言っていることはあながちウソではない。本当のことだ。だけど…。
「……みんなの重荷になるのはごめんよ。」
またため息をつかれた。
「あのなあ緑はん。」
そういうと、座り込んだ。
「…仲間っちゅうんは、いわば一つの持ち物ぜよ。どこかへ使う、必ず使う持ち物ぜよ。」
私はおとなしく聞いていた。
「…わしかって、死にたいって思いよった。じゃけど、悲しみを背負ってくれる仲間がいる、友がいる。じゃけん、わしゃあ死ななかった。……緑はん、わしらは仲間であり、友じゃ。友が悲しんでたらよりそうのが仲間ってもんじゃ。」