第11章 偽りの表情
~緑SIDE~
ご飯を作って、自分の部屋に戻ってきた。
多分、あれから宴会になるんだろう。
でも、今はお酒なんて飲む気になれない。
相変わらず辰馬はお酒に浸かるぐらい飲んで、今日のことを忘れようとするだろう。
わかってた。だから私もそうすればいいかなって思ってた。
でも、みんなを見れば見るほど、どうしても罪悪感が心の中にたまった。
悪いのは、私なんだ。
『お前の手は汚れてなんかいねえ』
ふと、晋助の言葉を思い出した。
あの時は、本当に何が何だかわからなくて、気にしなかったんだが、あれ、確実に晋助に抱きしめられてたよね。
あんまりそういうことを人にしない晋助が。
ああいうことは好きな女の子にしてあげるのが一番なのに。
少し恥ずかしい。
私は、晋助が好きだ。
好きというのは、多分恋愛感情じゃないと思う。
恋愛感情というのがいまいちわからない。
私は感情は教えてもらってきた。
あの人に、先生に。
でも、その先生は今近くにいなから私達が救うから。
だからそれまで私は…。
…そうだ、今私は晋助の話を…。
というか、なんというか。
あんなことをどうしてしたのか、まったく彼の心境がわからない。
今までだって、慰めるためにそんなことをしてくる人じゃなかった。
「……何にも言ってくれないから、わかんないんだけど…。」
やっぱり、私って女って見られてるんだな~。
みんなとは小さい時から一緒にいたから、別に今更私を意識しないでもいいと思うんだけど。
あ、でもあいつら全員デリカシーのかけらもないやつだったわ。あはは。
…辰馬に謝りたい。
私のせいだ。私があんなに天人に反抗するから。
もう少し、私が弱かったら、きっと捕まえるだけですんだだろう。
「……私の…せいだっ…。」
「何がか?」
いきなり声がしたので、つい障子のほうを向いた。
月明かりに照らされて、辰馬がニヤリと笑ってた。