• テキストサイズ

美しき銀の刃

第10章 五神の素顔


~緑SIDE~

もうすっかり外は暗くなってしまった。

今はちょうど会議が終わった頃だろうか。

私は麻布を桶につけてしぼり、また辰馬の額にのせる。

私が屋敷に着いたとき、辰馬が銀時と小太郎に支えられて帰ってきていた。

なんでも、死のうとしていたのを、銀時が気絶させて止めたらしい。

そのことを聞いたとき、私はショックで口がきけなかった。

いっつも笑顔の辰馬だ。

根っからの馬鹿で、前向きで、笑顔で、誰よりも多く笑っていた。そんな性格は、戦場では希望となっていて、みんな辰馬に助けられていた。少なくとも、私は。

でも、そんな辰馬でも、こればかりは堪えられなかったみたいだ。

そんなの当たり前。だって快援隊は全滅したんだから。

「…ごめんね……。」

全部全部私のせいだ。

私がおとなしく天人に捕まっておけばよかったんだ。

そしたらみんな死ななかったかもしれない、辰馬もこんなに苦しい思いしなかったかもしれない。

ごめんね、ごめんね、ごめんね……。

そう思うと、また涙がこぼれそうになった。

さっきずいぶんと晋助に慰めてもらったはずなのに。

「…ごめっ…ん…。ほんとに…ごめんっ…。」

辰馬が苦しむなんて。

信じられないわけではない、辰馬も一人の人間だ。怒ったり泣いたりするのは当たり前だ。

でも、布団で目を閉じている辰馬は、本当に悲しそうな顔をしていた。

私は、辰馬の手を握った。

「私…。本当に最低だよね…。辰馬がこの世で一番大事にしていた仲間達を…友を失わさせるなんて……最低だよっ…。」

こんなことして、私は偽善者ぶりたいのか。

いや、私は偽善者にもなれない。

こんなことは、辰馬が望んでいることではないからだ。

でもたまには…いいよね…?

私は、声を押し殺して泣いた。

/ 181ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp