第10章 五神の素顔
~緑SIDE~
もうすっかり外は暗くなってしまった。
今はちょうど会議が終わった頃だろうか。
私は麻布を桶につけてしぼり、また辰馬の額にのせる。
私が屋敷に着いたとき、辰馬が銀時と小太郎に支えられて帰ってきていた。
なんでも、死のうとしていたのを、銀時が気絶させて止めたらしい。
そのことを聞いたとき、私はショックで口がきけなかった。
いっつも笑顔の辰馬だ。
根っからの馬鹿で、前向きで、笑顔で、誰よりも多く笑っていた。そんな性格は、戦場では希望となっていて、みんな辰馬に助けられていた。少なくとも、私は。
でも、そんな辰馬でも、こればかりは堪えられなかったみたいだ。
そんなの当たり前。だって快援隊は全滅したんだから。
「…ごめんね……。」
全部全部私のせいだ。
私がおとなしく天人に捕まっておけばよかったんだ。
そしたらみんな死ななかったかもしれない、辰馬もこんなに苦しい思いしなかったかもしれない。
ごめんね、ごめんね、ごめんね……。
そう思うと、また涙がこぼれそうになった。
さっきずいぶんと晋助に慰めてもらったはずなのに。
「…ごめっ…ん…。ほんとに…ごめんっ…。」
辰馬が苦しむなんて。
信じられないわけではない、辰馬も一人の人間だ。怒ったり泣いたりするのは当たり前だ。
でも、布団で目を閉じている辰馬は、本当に悲しそうな顔をしていた。
私は、辰馬の手を握った。
「私…。本当に最低だよね…。辰馬がこの世で一番大事にしていた仲間達を…友を失わさせるなんて……最低だよっ…。」
こんなことして、私は偽善者ぶりたいのか。
いや、私は偽善者にもなれない。
こんなことは、辰馬が望んでいることではないからだ。
でもたまには…いいよね…?
私は、声を押し殺して泣いた。