第10章 五神の素顔
反論はできない。帰ってくるはずがないからだ。
「あいつらが願ってやってきたこの戦場だ。そりゃあ、中には嫌できたヤローもいただろうけどさ。でもよ、それも一つは運命だ。まわりのやつらは、それを認めるしかねえだろ。」
すると、紅い瞳はだらしない顔に戻った。
そして、今度こそ部屋を出ようとした。
「…待て、銀時。」
桂は引き留めた。
「あ?なんだよ、ヅラ。」
「ヅラじゃない、桂だ。」
そういうと、立ち上がって、旦那の前まで立った。
沈黙。
「……あのお、桂君?気持ち悪いんだけど「銀時。」
桂は口を開いた。
「じゃあお前は、松陽先生がもし死んだら、そのことをうけいれられるか?」
沈黙が流れた。
高杉はやばいって顔をしてるし、桂は桂で覚悟を決めた顔をした。
旦那の顔だけが見えない。
「………………………よ…。」
小さくつぶやいた。
「ん?」
「俺は認めるよ。」
また沈黙が続いた。
だが、まだ続きがあった。
「認める。…だが……。」
そういって、桂の耳元まできて、何かをポツリと言った。
旦那はそのまま部屋をでたが、桂は青ざめて固まってるわ、高杉も少し顔がひきつっていた。
何を話してたんでい?
旦那の顔は見えなかった。
死角で、高杉にしか顔は見えなかった気がする。
会議室は相変わらず静かだった。
~銀時SIDE~
「…ったく、なんなんだよコノヤロー!」
さっき、何を言ったか、自分でもいまいち覚えてねえ。
だけど多分、ヅラ達がおびえることをつぶやいたんだと思う。
「あ~、ちきしょー。」
こんなときは、辰馬と酒が飲みたい。
あ、辰馬今倒れてるんだった。
「………。」
もうすぐ夏が来そうな、ある雨あがりの夜だった。