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美しき銀の刃

第10章 五神の素顔


そうか、私、後ろから晋助に抱き着かれてるんだ。

「…晋助、離してよ。」
「いやだ。」
「なんでこんなことするの?」
「じゃあなんでお前は嘘ぱちの笑顔を俺にまで向ける。」

言葉がでなかった。

やっぱり、偽物の笑顔だって、ばれてたんだ。

「……癖。」
「癖だけで解決しようとすんなよ…。」

まだ、離れてくれないみたいだ。

「…俺はよお、緑。いつからてめえと一緒にいると思ってんだ。笑顔が偽物か本物かくらいわかるっつーの。」
「…ごめんね……。」

私はうつむいた。

「なんで謝るんだよ…。」
「ごめん…ごめん…ごめん…。」
「おい、緑!」

私は無理矢理晋助のほうを向かせられた。

「なんで謝る…」
「ごめんってば…。」

ポタッ

ポタポタッ

頬を伝って地面に落ちた。

「…緑……。」
「笑っとかないと、泣いちゃうでしょうが!ばかああ!!!」

私は晋助にグーで胸を殴った。

殴って殴って殴って…。

でも、やっぱり涙はでちゃう。

もう、とまらなかった。

嗚咽と一緒に殴ってた。

だんだん、殴ることもできなくなった。

私は、地面に座り込んだ。

「もうっ…ばっ…かっ……でっしょっ」
「緑…。」

今日は、本当に本当につらい。

時忠は、攘夷戦争を開始してときから、ずっと一緒にいた古くからの戦友だった。

いつも私の近くにいて、なんだかんだでよくしゃべってたほうだった。

時忠が、最後、なんて言おうとしたかなんて、私は知らない。

だけど、聞こえたんだ。聞こえたんだ。

『あなたは生きて』

時忠、私、生きたくない。

仲間がいないこの世界なんて。

晋助はずっと私をなでてた。

今日は本当に晋助らしくない。

いつもだったら、「泣き止め」だの言ってるくせに。

ごめん…時忠。

さよなら、時忠。
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