第9章 悲しき彼女の悪夢
坂本さんは振り向くにも振り向けないが、力が弱まった。
「そんなの、事態の収拾なんかじゃねえ…。お前はただ逃げたいだけだろ?この戦場から。消えた仲間達の、後に続きたいだけだろ?責任全部押しのけて、逃げだしたいだけだろ?」
その言葉に、全員が固まる。風の音しか聞こえない。
「そうやってよぉ、何かに逃げてる暇があるならよ…。」
刀の柄を、旦那はもった。
「その逃げたいものに、立ち向かう勇気をつくりやがれ!!バカヤロー!!!!」
柄を、坂本さんの首めがけて振り下ろす。
それがきれいにスパーンといったため、坂本さんは気絶した。
なんとか終わったようだ。
「…すまないな、辰馬。」
「お前が謝ることじゃねえ、ヅラ。誰だって、こんなのを見たら、死にたくなるさ。」
「…ヅラじゃない…、桂…だ。」
うつむきながら、桂は立ち上がり、坂本さんを支えた。
「…大丈夫でしたか…?ぎ、銀さん…。」
新八君は、いつもの「銀さん」を言いにくそうに言った。
「?あ、ああ、俺のこと?うん、まあ、いつもどおりだったわ。うん。」
「ごめんネ、銀ちゃん。私達足手まといだったでショ。」
「全然。」
そういうと、新八君とチャイナの頭に手をのせて、ぐしゃぐしゃとなでる。
「よく生き残れてたな!お前ら!その調子で次の戦も頑張ってくれよ。」
いつもとたいして変わりない態度に、二人共は少し嬉しそうだ。
「…ところで、だ…、いや、銀時さん、桂…さん。」
「「あ?」」
なんで俺だけこんな扱いなんだよ。
「高杉…さんは?」
「ああ、あいつなら先に本陣に走って帰ったぞ。」
桂がそう答えた。
「じゃあ、俺先に戻ってます。」
俺はそういうと、走って本陣にむかった。
足がふらふらだった姉さんを探すため。