第1章 追憶
~緑SIDE~
みんなが寝ていた。
私をずっと守っていてくれていたのだろうか。片手には刀を持っている。
「…なんだ、普通にかわいいじゃん。」
「目ぇ覚めたのか。」
その声に激しく動揺する。
さっきまで私の左で寝ていた銀時が目を覚ましたのだ。
「あ…、え…、おはよう?」
「ん。」
銀時はそっけない態度をとる。
まあ、いつものことだ。
女一人な私は、たいてい話しについていけることが少ない。だから男どももぎくしゃくする。
でも、今ぎくしゃくすることはないのではないだろうか。
「お前今日は寝てろよ。」
銀時がそう言って、私の肩を押した。
「わっと!」
ドサッという音がする。
死んだ魚のような眼が私の眼を見ている。
「…何よ。」
「お前…昨日のこと覚えてるか?」
昨日のこと?
記憶になかった。
なんせ熱があったことしか覚えていない。
そして…嫌な夢もなかにはあったが、夢の内容のほうが多い。
「…そんな顔するってことは、覚えてないんだな。」
すると銀時は、『ハアッ』と息を吐いた。
それがあきれたため息なのか、安堵したのか、それはわからなかった。
「何かあったの?」
「お前、昨日あんなどしゃぶりの中で倒れてたんだぜ。高熱。」
やっぱり思い出せない…。
そしてまだ少しぼーっとする…。
「何にも…。」
「そうか、なら別にいいんだ。」
そういって、銀時はさっき額にあった麻の布きれを濡らして、私の額に優しくおいた。