第9章 悲しき彼女の悪夢
「最初からこの戦争は、姉さんが狙いだったんだ…。」
その言葉にチャイナも新八君も動きを止める。
「…緑さんが狙いって…どういうことですか?!」
「見ただろ?姉さんに群がる天人の数を。」
新八君はまた固まった。
確かに考えてみればそうじゃないか。
姉さんに対して、二やつきながら刀を振り回してた。
きっと、天人にとって、弱い者は女子供であり、人質にでもとるつもりだったんだろう。
それが意外と大人っぽい女で、武術の腕も相当だった。
だから、数で選んだ。
姉さん一人とるために、快援隊は全滅した。
…そう話すと、やっぱり信じられないという顔をした。
「…みーちゃん……。」
チャイナは泣きそうだ。
「…これは姉さんの夢でぃ。でも、実際にあったことでもある。つまり、これは…。」
「緑さんの悪夢の正体…ですよね。」
新八君はうつむいた。
そうしているうちに、声が聞こえてきた。
「……ありゃ…?みんな…?」
俺達は声の方向を向いた。
そこには、快援隊隊長、坂本辰馬が立っていた。
俺達には気づいていない。
「みんなして、なんで寝とるがか?そげなところで寝ちょったら、風邪ば引くきに!」
返事はない。
それでも坂本さんはしゃべっている。
「…あ、あははは!みんなして、わしを無視か!ええ度胸じゃのう!はよ立たんか!本陣に帰るど!!」
…それでも返事はない…。
「……みんな…帰るきに…。」
坂本さんはついに膝をついた。
「…嘘…じゃ…。嘘に決まってる…。快援隊ば……全滅…ない…絶対ない…。」
俺達は少しずつ近寄ってみた。
「…緑はん…?緑はんはどうしたんじゃ…?」
そういって、坂本さんはいきなり立ったかと思うと、急いで姉さんが戦っていたところまで行く。
「緑は……!」