第8章 意外な男
「……へ?」
私がきょとんとしているのにもかかわらず、二人は防具をいそいそと片付け始めた。
「緑さんさすがですね!今度僕にも教えてくださいよ!」
「何言ってるアルか!私が先に教えてもらうアル!いいよネ?みーちゃん!」
二人とも笑顔で私に話しかけてくる。
私は少し心が温まった気がした。
「…うん、今度教えてあげる。二人とも、吸収するのが早いから!!」
そういうと、二人は大喜びだった。
……この子達は、私を一人になんてさせようとしない勢いだ。
私だって、本当はあいつらの中に入って話したい。
わいわい騒ぎたい。
でも、なぜかいつも私は仲間外れだ。
それは、私が女だから…?
そう、いつだって思ってしまう。
でも、でもこの二人は。
私のことを気にかけてくれたんだ。
そう思うと、本当にうれしい気持ちになった。
一人じゃない、そう思えた。
~沖田SIDE~
さっきから、姉さんはあいつらとしゃべってる。
「すごい!」「君ほんと何歳??」「やばくね、これ!」そんな声が永遠と聞こえてきた。
あいつらに話しかけられる前、姉さんは一瞬とてもさみしそうな顔をした。
『私、男女差別が嫌いなの。それで、ついかっとなって、万事屋飛び出しちゃってさあ…。』
笑いながらそう言っていた姉さんを思い出す。
姉さんはこの戦場に、紅一点で今までいた。
もしかしたら、いや絶対さみしい思いはしていたはずだ。
……姉さんの悪夢って……?
そもそもここは姉さんの夢の中。タイムスリップをしてきたわけじゃない。
こうやって楽しい思い出もあった。
そして、楽しいの次にくるのは決まって………。
不幸。
そんな恐ろしい考えがよぎった。
もし、もしこの後、姉さんが悪夢だというものが出てくるんだとすれば。
それは一体?
そう考えているうちに周りはまた稽古をし始めた。
新八君が呼んでいる。
…考えながら稽古するのも悪くはねえか。
俺は竹刀を持って、二人の元へ行った。