第8章 意外な男
~緑SIDE~
総悟が手を挙げている。
他の隊士は私におびえて手も挙げてないのに、総悟はすごいな~。
「いいわよ、総悟。じゃ、誰か、彼に防具を渡してあげて。」
「へい。」
副隊長がそれに便乗して素早く防具を渡す。
総悟と私は向かい合って構える。
しばらく沈黙が続いた。
すると、総悟から動いてきた。
上から振り下ろされる竹刀を、いつも通り正面で受ける。
そのまま、力を最大限に使って、竹刀ごと総悟を後ろへ追いやる。
追いやった瞬間、今度は総悟はしゃがみ、すぐさま攻撃できる体勢を維持してきた。
――――――おもしろい――――
さっきの稽古を見ていて思った。
総悟は幾度か刀を交えて戦ったことがある。
それは新八や、神楽も同じことだったけど…。
総悟は人を斬って殺したことがあるはずだ。
でないと、瞬時にたったいまの体勢になるはずがない。
ずいぶんと倒しがいのある子だ。
今度は私から攻撃に移った。
総悟が子供だからと手加減はしない。
まず上から下へ、次に右から左へと、連続攻撃を素早くした。
総悟はなんとか防御してたもっているようだが、どうやら相当きついらしい。少し隙が見え始めてきた。
「総悟、どうした?最初の威勢は。」
「…っち!!」
総悟は後ろへ下がる。私の攻撃を避けるためだ。
総悟はすでに息があがっている。
「…はあ…はあ…。姉…緑さん、強すぎでさあ…。」
「そりゃどうも。」
まあ、18歳の男にこんなに意地になる私も私だけどね。
「どうする?もうやめとく?」
「……そうさせてもらいまさあ…。これ以上戦っても、勝てる気がしねえ…。」
そういうと、防具を脱ぎ捨てて、床に倒れこんだ。
隊士達はすぐに総悟のほうへ寄っていく。
私には決して寄ってこない。
わかってる、わかってるんだ…。
私がたとえ勝ったとしても、負けたとしても、どのみち彼らが寄ってくることはないってことくらい。
私は防具を外そうと、手をうしろへやった。
「あ、みーちゃん、私がするアル!!」
声にびっくりして思わず竹刀を落とす。
「緑さん、僕も手伝いますよ。」
新八と神楽が、私のほうへ寄ってきた。