第6章 綺麗な花にはとげがある
新八君は顔色をさっと青くした。
「そうか、志願兵だったか。」
高杉は、囲んでいた兵に合図をすると、刀をおろさした。
「へい。しかし、戦場がいまいちわからなくて困ってたんでさあ。」
また肩をつついてきた。
『お前、まさか私達を戦争に出すきアルか。』
無視して話しを続ける。
「なら俺が案内してやる、ついてこい。」
高杉は背を向けた。
兵達は何やらぶつぶつ言いながら後を追っている。
すると、上から手が降ってきた。
素早くよける。
「ちょっとおおおおお!何あんた志願兵にしたてあげてんの!?僕、まともに戦ったことないんですけどおお!」
「かよわいレディーに、戦場に出すつもりアルか!?」
そう言いながら大岩を持ち上げている。
「いや、かよわいレディーがそんな岩持ち上げねーよ。」
どうやら相当びびっているらしい。
「大丈夫でい、死んでもここは姉さんの夢の中。死にやしねーよ。」
「死ぬ前提かよおおおお!」
またつっこまれたが、無視して高杉の後を追う。
…にしても、これが姉さんの夢?
高杉がいるってことは、姉さんが攘夷戦争に旦那と参加してたってことにる…。
やっぱり姉さんは、攘夷戦争に…。
いや、そんな野暮なこと考えるのはよそう。
たとえ姉さんが『黄色い悪魔』という名前で呼ばれていたとしても、俺は変わらず姉さんに接するだけだ。
「おい、着いたぞ。」
そう思っているうちに、本陣に着いたようだ。
「にしてもお前ら、スパイなんかじゃあねえだろうな。」
高杉はまだ疑っている。
「スパイじゃないという証拠はありやせんが、俺がスパイだという証拠はないんですかい?」
「…まあいいだろう。どうせてめえみてえなガキはすぐ死ぬだけだしよお。」
…こいつ、今も昔も変わってねえ。
完全に俺達をなめてやがらあ。
「晋助、帰っていたのか。」
そうしてやってきた男。
…こいつはあ。
後ろの二人も度肝を抜いたようだった。