第5章 光は闇に消える
俺達はしばらく戦いあっていた。
こいつは本当に強い。
姉さんや、旦那にはおとるが、俺が戦ってもぎりぎりの相手なんざ、今までいたことがない。
土方さんもこいつを追跡するのに苦労してたわけかい。
そう思いながら戦えるということは、まだ大丈夫ということか…。
そして俺は刀に力をこめ、男を突き飛ばす。
「うわっと!」
男は体制を崩し、刀も少しぶれた。
チャンスだった。
俺はそいつの首元に刀をそえた。
「おとなしくしてろい、もうすぐお前はお縄につくんだぜ?」
「くそっ…。」
強いと思ったのは一瞬だったのかもしれない。
土方に同情したのも、ほんの数秒だ。
「…なんていうと思ったか?」
「!!」
男は後ろへ下がり、体制を整えて刀を構えた。
「ちっ!」
俺も後ろにさがる。
「お前みたいな強い奴が、こんな犯罪を犯して、何が楽しんでい。あんた、以前攘夷戦争でてたんだろ?旦那のことも知ってんだろ?どうしてこんなことばかりするんでい!」
男はにやけ顔から普通の顔に戻った。
「……あなた達にはわからないですよ。」
「あ?」
そして、だんだんと怒りをあらわにしていく。
「あの女のせいでっ!我が弟は死んだんだっ!あいつが助けてくれていたらっ!唯一の肉親だった…。」
その言葉に、俺は固まることしかできなかった。
「幕府に殺されたが、同時に仲間を裏切ったあの女にも殺されたんだっ!そうだっ!俺は復讐をしなければならない…。あの女…「黄色い悪魔」にっ!!」
姉さんが…『黄色い悪魔』…?
俺は呆然としてしまった。
姉さんは今まで隠してきたんだ。
俺達に何も言わずに、攘夷戦争に参加してたなんて。
土方の言っていたことを、全て違うと言い切れなかった。
そうだった…のか?
その時。
旦那の叫び声と同時に、俺は視界が横にずれた。
横をみると、姉さんが悲しそうな笑顔をしている。
姉…さ…
そういおうとしたとき。
木刀が頭に飛んで、俺は床に転げ落ちた。