第1章 追憶
「っ!」
少し離れる。
緑は動かない。何かをぶつぶつつぶやいている。
「…緑、お前どうした?」
いつもいつも笑顔で、仲間たちからも支持も強く、みんなの支えになっている、まるでひまわりのような奴だ。
なのに今日は何かおかしい。本当に、何かがおかしい。
それに…。
「お前…すげえ熱いぞ。」
高熱だ。それも人間があっていい温度じゃねえ。
「私は…私は…。」
やっと聞こえてきた。俺は今度こそ緑の近くに行く。
「もう…いやなのに…。」
緑の顔をみると、本当に顔が赤い。いつものあの宝石のような黄色の眼も、今日はかなり濁っていた。
「…緑、寝床へ行こう。お前はとりあえず雨に打たれてたらひどくなる、その熱が。」
「もういやだあ~!」
曇天の空を見上げてそう叫んだ。
ずっと泣いていたのだ、彼女は。
そのまま緑は話を続ける。
「もう、疲れたの!ほんとはおうちに帰りたいのぉ!先生に、松陽先生に頭を撫でられたいよ!毎日毎日仲間が死んでいくのに、何もしてあげられないし…。なんなのあの作り笑顔!ははは!どうせ一般世間からは「黄色い悪魔」なんて言われてるのにさあ!」
混乱してるのか、まだぶつぶつ言っていたが、聞き取れなかった。