第3章 己の中の魂
『……り…、緑…。」
ああ、とても懐かしい声。
そのきれいな髪の毛、優しい笑顔。
何もかもが好きでした。
でも…でもあなたは…。
どうして?ねえどうしてなの?
どうして私の前から姿をけしたのですか?
私に愛を教えてくれた、言葉を、感情を教えてくれた。
そんなあなたが…どうして死ななければならなかったのですか?
ねえ…答えてよ、父さん。いや…
「松陽先生!!!!!」
私は大声を出して起き上がる。
まだかなり頭は痛いし、やっぱり汗もかいている。
ここは布団だ。
しかも、なんか、畳。
「目…目え覚めたかよ…。」
そんな声が横から聞こえてきた。
横を見るとそこに立っていたのは…。
「あれ?土方?なんでここに…。」
土方十四郎が私のほうへやってきた。
「…お前、倒れてたんだよ。」
「倒れてって…、ああ、そういうこと。」
どうやら、あの光はパトカーの光だったらしい。
私が倒れたとき、土方がそれを発見して、ほっとくわけにもいかなかったので、とりあえず屯所にきたということだ。
「珍しいね、鬼の副長とあろうものが、女助けるなんて。」
「なんだよ、助けて悪いかよ。…にしてもお前、なんであんなとこで倒れてたんだ。」
「え…?ああ、まあ…いろいろあってね…。」
そういい終わらないうちに、ふすまがあわただしく開いた。
「姉(アネ)さ~~~ん!」
やってきたのは、まだ少し童顔な沖田総悟だ。
「てんめ!仕事はどうした、仕事は!」
「片付けてきやした。それより…、姉さん大丈夫ですかい??」
総悟はなぜかわからないけど、偉く私になついている。それはもう、ミツバさんと同じ扱いを受けているような感じで。
「ああ、大丈夫よ、総悟。なんか、真撰組には迷惑かけちゃったみたいだね。」
「何言ってんですかい!姉さん倒れたって聞いて、ダッシュでここまできたんでい!けがはありやせんか??」
姉思い(シスコンくらい言わなきゃダメか)の総悟だが、ここまで心配されるとさすがにおかしいと思う。