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美しき銀の刃

第20章 終わって始まる


朝。

気持ちの良い朝だった。

こんな朝は、いつぶりだろうか。

昨日、晋助と仲直りした。

まだ、深い傷はお互いにある。だけど、それでも、やり直していけるはずだ。

そして、萩に帰ることも決まった。

俺からすりゃ、どこに住んでも同じだろうが、萩は土佐にも近いし、江戸からは遠い。

隠れるのには最適な上、もしかしたら辰馬とも再会できるかもしれない。

そんな期待を持って、目が覚めた。

今日は、緑に説明しねえとな。

にしても、昨日は緑を一回も見てねえけど、どうしたんだろうか。

もう起きてるかもしれないが、緑の部屋に行って、様子を見てこよう。

そして、笑顔でこう言うんだ。


『おはよう』って。



軽く鼻歌を歌いながら着替えて、スキップをしながら廊下を歩いた。

今日は、本当に、気持ちがいい。













緑の部屋の障子をあける。

綺麗に片付けられた部屋がそこにはあった。

「…いねえのか?」

変だ。緑の部屋に向かう途中、食堂とかは見てきたはずだ。

なのに、なぜ……?

嫌な予感がした。

ふいに、廊下の先を見た。

そこには、いつものように、緑の下駄があるは…ず…なの……に…。

急いで部屋のふすまを開ける。

いつもなら、荷物があるはずだ。

…ない。

緑がいたという痕跡が、まるでなくなっていた。

刀も、あまつさえ着物一着もない。

しかし、ここは確実に緑の部屋だ。

緑の部屋は、一番端。忘れるはずがない。

頭の中が、どんどん真っ白になっていく。

冷や汗がでてきた。




























机の上には白い紙、乾いた筆。

そして、笛が一つ。

銀髪が、風でゆらゆらまった。
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