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美しき銀の刃

第19章 狂ったあとの静寂は


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だめだ。何もやる気がおきない。

体が動かない、瞬きひとつしたくねえ。

息さえするのがめんどうだ。

緑が、変だ。

あいつはよく隠し事をする。

だから、自分の体調がおかしいときなんか、何も言わない。

ほっといたらすぐに死んじまうんじゃないかって、不安で仕方がない。

でも、今俺があいつの心配をしていいのか。その価値があるのか。

……俺は、何も救えなかった。

また、とりこぼしちまった。

もっとも大切な人でさえ。

もっとも大切な友、仲間を護ることができても、意味がないんだ。

あの人を、助けれる方法はなかったのか。

わからない、もう、いくら考えたって、『松陽を殺したのは俺』という事実に、なんら変わりはないからだ。

「……はあ、もう、いっか。」
「何がよいのだ。」

…なんでいきなり声がするんだよ。

「おい、てめえ、幽霊になっちまったのか?」
「幽霊じゃない、桂だ。それにおかしいのは貴様のほうだ。いつもなら、気づいておるではないか。」

まあ、いつもなら、ね。

「なんだよ、何しに来たんだよ。悪いけど、俺は誰とも顔を合わせるつもりはないからな。」

そういって、顔をそむけようとしたときだった。

顔面に、衝撃が届く。

そのまま、壁にぶつかった。

壁には、くぼみができる。

「……ってえな。なんなんですか、いきなり人を殴って。」

舌打ちをしながら、顔をあげた。

すると、そこには泣き出しそうな顔のヅラ。

「……おい、こた…」
「なんなんですかと言いたいのは、こっちのほうだ。」

奴の手が、震えている。

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