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美しき銀の刃

第18章 終戦、そして


皿を洗う手が止まる。

「………本当にすまなかった……。」

何に対して謝っているのか。

まあ、小太郎のことだし、大体の予想はつくけれど。

「……小太郎が謝ることないわ。」
「しかし……。」

小太郎は、自分の掌を見つめる。

「俺は……俺は、助けることができなかった…。」

私は静かに聞く。

「この掌に、助けたい者はみな、とりこぼしていく。なぜだ?なぜ、また助けれなかった?……その思いでいっぱいで、苦しい。」
「………全て、ではないでしょう??」

小太郎の顔が少しあがる。

「………確かに、助からなかった。消えてしまった人もいる。でも、全てではないじゃない。小太郎によって、助かった人が、今までに何百人いると思ってるの?」

そうだ。

いつだって小太郎は。

「いつだって、いつだってあんたは、輪をなごませてた。変なところが天然で、人とずれてるけど、それでも。小太郎がその場にいるだけでも、誰かがいつも助かってた。」

だから、だからね、小太郎。

「………だから、自分を責めないで。」

一番悪いのは

ワタシダカラ

「…緑は、助かっているのか?」
「え?」

突然の問いかけに、少し戸惑う。

しかし、きちんと答える。

「助かってるわよー!そりゃ、とうぜ「身体ではない、心のことだ。」

私が言おうとしたことに、言葉をかぶせてくる。

「…………心?」
「何年、一緒に生活してると思ってるんだ。」

そういうと、私の方を向いた。

「緑は感情が顔によく出る。隠せていると思っていたのか?……今も、無理矢理笑っているだろう?」

何も言えなくなった。

「俺は…………、本当に、何かを見るのが辛かった。床や天井でさえも、消えて欲しかった。そんなものでも、あの人との思い出が、蘇ってきてしまうから。だが、その反面、お前はどうだ?あの日から1日も経たずして仕事をし、飯を作り、隊士の面倒を見ていた。それで、大丈夫だと言うならば、それはそれで」

壊れているだろう?

………もう、とっくの昔に。
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