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美しき銀の刃

第18章 終戦、そして


…………

しばらくしても、なんの痛みも感じなかった。

それどころか、刀を振り下ろした音すら聞こえなかった。

俺は静かに目を開いた。

目の前は真っ白だった。

……いや、ところどころ紅い。血か?

俺は見上げた。

目の前には、刀を素手で持って、俺の前に姉さんを遮るようにして男が立っていた。

旦那だ。

「………緑。」

旦那は静かに口を開く。

だが、姉さんは旦那に止められている手をカタカタと震えさせ、まだ攻撃しようとしていた。




旦那は、姉さんを抱き寄せた。



「緑………もう、もういいんだよ。」

姉さんは少し顔をひくっとさせた。

「もう、頑張らなくていいんだ。」

姉さんの顔が、元に戻っていく。

「俺たちの戦いは、終わったんだ。」

何を言っているのかわからない、という顔をしている。

「緑。」
「……に、よ。」

姉さんがついに口を開いた。

「な、によ。何?まだ終わってないわ。先生が、先生がまだ「先生は俺が殺した!!」

姉さんの顔が固まる。

「目の前で見ただろ?先生は………松陽は俺が首を斬った。」

カラーンと、刀が落ちる音がした。

「……そよ、嘘よ。だって、だって!!」

旦那は何も言わなくなった。

「う、うう、せ、せ……いやああああああああああああああああああああああああ!!!!」

姉さんは叫んだあと、静かに目を閉じた。

雨がポツ、ポツと落ちてくる。

俺たちは何も言えなくて、その場に固まっていた。

旦那は姉さんを抱えると、首だけになった男の元へ行き、首を静かに持って、布の上に置いた。

そしてそこからその首を見ることなく、ただ前を向いていた。

何もしていなかった桂や高杉も、少しずつ動いていった。

そして、今度こそ動かなくなった。




雨が、体や心にしみた日だった。
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