第17章 終わりの合図
辺りは静寂に包まれていた。
隣のガキ二人も、何も言えずにただ呆然としていた。
……まさか、まさか。
旦那が……首を……?
その静寂を打ち破ったのは、高杉だった。
何も言わずに奈落集団を押しのけ、旦那のほうへ突進していった。
「銀時イイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」
しかし、それも叶わず。
高杉は一瞬動きを止める。
その瞬間、高杉のほうへ針が。
それはそのまま、高杉の左目へと刺さっていった。
高杉はそのまま倒れると何も言わなくなった。
………無理もない。
俺はちょうどそれぞれの横顔がみれるような場所にいた。
だから、旦那の顔もよく見えた。
旦那は…………泣いていた。
静かに微笑み、そして目からは涙が落ちていた。
それにも、何も言えなかった。
桂は地面に顔をはりつけ、悔しそうな顔をしていた。
「師に拾ってもらった命、無駄にするものではない。」
高杉の目に針を刺した張本人、奈落の男は静かに見下ろした。
「……あの男に、情けでもかけているのか、朧。」
朧と呼ばれたその男は、話しかけられたほうへ向き、答えた。
「……最早、守るものもなくなった以上、殺す価値などありません。守るものがなくなったということは、侍にとって死したも同じ。何よりこやつらは、それを自らの弱さゆえ、自らで壊したのです。」
そう言うと、朧はもう一度高杉達のほうを向いてこう言い放った。
「殺す価値もなし。もう二度と、剣を握ることもできぬでしょう。」
そう言って、消え去った……。