第16章 目覚め
「駆け引き…だと?」
なんとか開ける口で俺は奴に対抗するように口を開いた。
「簡単なことだ。まあ、こいつを見たほうがはやいだろう。」
そして、その男は後ろの方に合図をだした。
すると、いつからいたのか、男と似たような格好をし、顔を見えないようにしているやつらが、誰かを連れてやってきた。
……その誰かが。
「っ!!ってめえ!!!」
そこには、腕を後ろに縛られていて、意識がない状態でそいつらに抱えられている緑がいた。
「……おい、晋助はどーしたんだ。緑を離せ。…………殺すぞ。」
怒りがこみ上げてきた。こいつら、俺たちの作戦を……!!
「白夜叉、これほ駆け引きだと言ったはずだ。」
「なんなんだよその駆け引きってのはよ!!!」
身体中がまだ痛い。針みたいなのを刺されて、身動きも取れない。
俺はこいつらに、幕府に、天人に従うしかねえのか……!
「お前の答え次第で、この者どもが救われるかどうかが決まる。好きな方を決めるがよい。」
そういうと、こいつは、俺の耳元まで来ると、小声で話しかけた。
その内容は、俺にもこいつらにも、最も残酷で、苦しい、そんな言葉だった。
………俺は…どう……したら………?
「答えを決めるのには少し時間がいるか。とりあえず、こいつらを牢へ連れて行け。ああ、松陽とは別のところに………な。」
そういうと、奴は消え、俺やヅラ、緑は無理矢理牢へ連れて行かれることになった。
何も、考えてはいなかった。
ただ、これから起こることに、何もできずに終わるのか。
嗚呼、俺は、俺は、俺は………。
もう取り返しがつかなくなるかもしれない。
もう笑いあうことはできなくなるかもしれない。
それでも俺は…俺は…。
暗い牢だった。
暗すぎて、夜明けも何も見えない、そんな夜だった。