第16章 目覚め
一瞬の出来事だった。
黒い着物が見えた。
が、すぐにそれは隣に消える。
…今のは人間なのか…?
「ぐわっ!!!」
「っ!ヅラ!!」
隣にいたのに、まったく気づかなかった。一体なんだ?
俺は瞬時に身構え、相手が攻撃する瞬間を感じ取る。
………今だ!!!
「うおりゃあああああああああ!!!!!」
カキーン!!
刃と刃がぶつかり合う音が聞こえる。
目の前にいたのは、一羽のカラス、ではなく男。
お互い、後ろに下がる。
「……おいおい、てめえか?緑と晋助をどっかにやっちまった野郎は。」
「………。」
男は無言だ。
「何も言うことがねえってか。そりゃ残念だ。」
「…鬼。」
俺は次の瞬間、そいつに攻撃していた。
体が、勝手に動いた気分だった。
上から振り上げたため、それを簡単に防御され、さっきと同じような形になってしまう。
「そうか…。お前があの『鬼』か。初めて見る…が、なるほど。確かに、『白夜叉』と言われていても、なんらおかしくないな。」
「………やめろ。」
嫌いだ。嫌いだからやめろ。
「昔も今も相変わらず、血に濡れた名前をつけられたものだな、白夜叉。」
「…やめろ。」
俺の名前は、そんなんじゃねえ。
「その紅い眼が、何よりの証拠といえよう。」
「やめろって言ってんのが、聞こえねえのかァァァァァ!!!!」
さっきとは違い、一秒間に五回くらいやつに刀を当てる勢いで刀を振るった。
上、下、上、下、右、下…。
何度も何度も斬った。
斬ったつもりだった…。
それは本当に一瞬の出来事だった。
腕。足。肩。
一気に動かなくなった。
と、思えばすぐに腹に衝撃が。
「くはっ!」
俺は壁に衝突。
目の前にはあの男が。
「白夜叉、少し駆け引きをしないか。」