第15章 悪魔のささやき
~緑SIDE~
『自我が消えかかってる』
そう銀時に最後の警告をしたつもりだったんだけど。
銀時は以外にもしれっとした顔でこう言った。
「斬りたいなら、斬ればいいんじゃね?」
普通の人ならば「はあ?!」だ。
もちろん私も「はあ?!」と言った。
でも、それっきり銀時と会話することはなかった。
今は朝焼けが無駄にまぶしい。
隊士達はのそのそと起きてきてる。
私はというと、昨日から一睡もできていなかったため、めちゃくちゃ眠い。といいたいところだが、事実、あまり眠くない。
今日はもう城に突入しなくてはならなかった。
少しみんなピリピリしている。
(……私はなるべく、一人で突撃したほうがよさそうね。)
昨日の三人のように、また怖がらせるかもしれない。
人からおびえられるのは、もううんざりだ。
うんざりというほど、味わったのだから。
「…さて、小太郎達を起こしてきますか。」
こんなのんきなことが言えるのも、今日が最後かもしれなかった。
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辺りはすっかり暗くなっていた。
朝焼けが見えたというのに、天気は曇天。
今にも雨が降ってきそうな様子だ。
隊士達と天人達は、さっきからずっと、ピクリとも動かずにみらみあいっこをしている。
本来ならば静かにここを突破できる予定だったか、誰から漏れたのか、天人達は気づいていたらしい。
(こんなんじゃ、埒があかないわ!)
私は弓矢をもつ。
そして最大限に弓をひき、放った。
ひゅっ!!
矢は、天人の大将格ともいえるやつに命中。
この一つで、一気に戦闘が始まってしまった。
隣には誰もいない。多分後ろ。
だから、後ろを信じて、前を斬っていくのみ。
どこかで誰かの薄気味悪い声が聞こえた気がした。