第13章 時はやってくる
「何甘ったれたこと言ってんだ。」
晋助が少し不機嫌な顔をした。
「おい緑。」
「何?」
「その城、なんかあんのか。」
ギクッ!
…さすが晋助。なんて鋭さだ。
「…ま…まあ…ね。」
「何があるんだ。」
さすがにそこまで言ったらこいつらきっとこんなケガでも暴れるんじゃないだろうか…。
「…もしかして先生か?」
ギクギクギクッ!
うわあ、見事に当ててきたよこの人!
「…まさか…図星か?」
なにも言い返してないのだから、図星ということにしておこうよ…。
「何?!先生がどうしたんだ!!」
さっきまでおとなしかった小太郎が勢いを増して私のほうを向いた。
「………観念しろ。」
正直に言うしかなくなった私は、しぶしぶ口を開けた。
「…先生がその城に移動したのよ。三日前にね。」
「「何っ!!」」
偵察隊から聞いた話だ。
偵察隊というのは、攘夷活動をしている志士達が動きやすいように情報を提供してくれる隊で、この付近には三つくらいある。
そのうちの二つから聞いた情報だ。間違いない。
「…だからここから移動して、その城を攻めて、先生助けるって言ってるのよ。」
「しかし、やはり陣営を動かす資金がない…。」
ふふふ~…。そういわれると思っていたのよ。
「あー、私もそれは思ったわ。でもね、それが今日、朗報が入ったのよ!」
「なんだ?」
私は、今日資金を援助してくれる団体が見つかったこと、その団体が江戸にいるということ、天道衆という名前などを教えた。
「…天道衆…?」
「そう。まあ、何かはわからないけどね…。」
「ま、資金もあるし、他ならねえ先生のことだ。陣営を動かすのに異論のあるやつは、川に身を投げて死ね。」
晋助が偉く怖くみえたのは、きっと気のせいじゃないだろう。