第12章 星空の下で
…姉上。
新八にも家族というものがいるのだろう。
そういえば神楽もよく母や父の話をする。
総悟はそういう話をまったくしないが、おそらく家族はいるのだろう。
みんなみんな家族を残してこの戦争に参加している。
中には家族を残して亡くなった隊士もいる。
……本当に、この戦争は間違っていなかったのだろうか。
たまに、わからなくなる。
あの人は、天人と仲良く暮らす方法をいつも考えていた。
私も、その思想はとても共感できたし、もしそれが通ったのなら、いいんじゃないかと思った。
でも……。
幕府は、天人はあの人を奪った。
だから、私達は早くあの人を奪還しないといけない。
私の、数少ない家族と呼べる、師と呼べる、親と呼べる…。
あの人を奪還するまで、私は戦わないといけない。
戦争が間違いだなんて決めたら、今までの私達の苦しみがなかったことにされる。
そんなの絶対嫌だ。
筆と紙を取り出す。
私達をかくまってくれそうなところに、手紙をださないと。
拠点を移す準備にとりかかった。
~新八SIDE~
「悪いな、志村。」
目の前の高杉さんは素直に礼を言う。
「いえいえ、とんでもないです。ゆっくり治していってください。」
「ああ。」
この人、ほんとにあの高杉晋助と同一人物なんだよね…。なんかありえない。
昔の高杉さんは、おとなしくて、まだ人間だった。
あんな狂気に満ち溢れた様子はなく、普通に桂さんや銀さんとふざけあえるような人柄だった。
本当に、時というのは恐ろしい。
桂さんも、今ほど昔はおかしくなかった。
むしろ、頭脳はずば抜けて鋭く、観察力も鋭い。
何が原因で四人が変わったのか、不思議でならない。
坂本さんが一番変わっていない気がする。