第12章 星空の下で
「にしても辰馬の土佐弁も、だいぶ抜けてきたわねえ~。」
その言葉に辰馬ぎょっとする。
「なんいいようがか!わしゃあかったしから勉強しちょう!おかげんさまで、ちくっとばっかし直ったんじゃ!」
「ええ?勉強してたの??」
少し笑いそうになった。
「そうじゃ。なおってきたじゃろ??」
そういえば、私も長州弁が抜けるのに苦労したのを覚えている。
「なん笑っちょう!」
「笑ってないってば!」
私は堪えきれずに笑ってしまった。
辰馬もなんだかんだで笑い出した。
「はあ~!こんなに笑ったの久しぶり!」
「わしもじゃ!」
「いやいや、辰馬はいつもでしょ。」
「そうか?いやあ~わしってそんな感じじゃったか~!」
またあははと笑い出す。
「あ、そういえば緑はんは方言とか使わんのか?」
「私?う~ん、もう抜けてしまったからねえ。」
なんだか、それでいじりたそうにしている。
「……何よ。」
「何の方言じゃったんか??」
興味しんしんのようだ。
「長州よ、長州弁。」
「ああそうか!緑はん達は長州出身じゃけんな!どんな言葉じゃったんか?」
辰馬はにこにこだ。
「そう…ねえ。う~ん…。」
私は少し考えた。
そしてなんとなく話してみた。
「わっちの名は緑っちゅう!」
「……わっち?」
「そう。わっち。」
しばらく沈黙したあと、辰馬がいきなり吹きだした。
「ちょ!なんで笑うのよ!!」
少し恥ずかしくなった私は、辰馬の頭をひったたく。
「いでっ!い、いやあ、悪かったのう…。緑はん、そりゃあ花魁が私というときに使う言葉じゃけえ…。」
「!!長州はこんなかんじなんだから仕方ないじゃない!!」
辰馬はまだ笑っている。
「もう…。そろそろ私部屋に帰るわね。なんだか寝れなくなっちゃいそう。辰馬も帰らない?」
じゃっかん話をそらしたが、まあいいだろう。
「いやあ、わしはまだ帰らん。緑はん先に帰っちょってもええきに。」
「わかったわ。じゃあね。」
長州弁の借りをいつ返そうかと考えながら屋根から降りた。