第3章 それから
今後何かあった場合にサイタマさんやジェノス君に助けを求める手段としてジェノス君と電話番号を交換し合った。
サイタマさんは携帯を持っていないため、ジェノス君伝いに知らせてもらう事になった。
今は運良く誰かに助けてもらえているからいいが、いつか絶望的状況になったら困るということで交換してくれたのだ。
携帯電話がとても心強い存在になった。
仕事の方は街が大方復旧してきた辺りで連絡が来て、無事に業務再開となった。
サイタマさんを批判する声は未だに根強そうだが、サイタマさん自身は気にしていなさそうな様子なので、私もあまり気にしすぎないようにしよう。
いつかサイタマさんの実力と世間の認識の誤差が埋まれば、きっと彼はみんなから愛され、求められる存在になる。
例え遠い存在になってしまっても私は応援し続けようと決めた。
隕石落下前の日常が戻りつつあったある日、仕事を淡々とこなす私の耳にとんでもないニュースが飛び込んできた。
「聞いたか?J市に現れた深海族の話。」
雑巾を絞っていた手を止めてヒーローの立ち話に聞き耳を立てる。
「あぁ、今スティンガーが1人で応戦してるって話だけど…」
「力になれるかもしれないし、俺達も向かってみるかぁ。」
気配を消しているのでヒーロー達は聞き耳を立てている私に気付くことなく、そんな会話をしていた。
しかし。
「大変だ!!」
慌てた様に走り込んできた人が、立ち話をしているヒーローの輪に加わる。
「たった今災害レベルが上がって、なんかJ市ヤバいらしい!」
「うわ、マジかよ。」
緊迫した雰囲気を感じ取って一大ニュースを前に更に盗み聞きを続ける。
「スティンガーが深海王とか名乗る怪人にやられて、そいつがめちゃくちゃ強いらしくて…」
そこまで聞いた所で先輩が遠くから手招きしているのが見えたため、盗み聞きを止めてそちらに駆け寄った。
「結構大きいニュース、聞いた?」
駆け寄った先で先輩が小声で話しかけてくる。
仕事の手を止めて盗み聞きしてたのがバレたら怒られると思い、首を小刻みに横に振った。