第1章 これまで
子供の頃から何故か怪人を引き寄せる体質の女(21)
そのせいで鍛え上げられた精神力は並大抵の怪人の前では揺らぐことがなく、いつしか女は無感情になってしまった
無感情、無口、無気力、影が薄い
そのせいか、はたまた怪人が寄り付くせいか、
友達も居なければ知り合いも居ない
悲しき女は今日も怪人と見つめ合っていた。
「ヒョッヒョッヒョッ!ひょっとこ面を愛するあまり、ひょっとこ面が取れないまま怪人になったヒョットコ仮面様だ!」
「……」
「ひょっとこ面をバカにして笑う奴らを同じ顔に変形するまで殴ってやる!」
「……」
「女!今、俺様をバカにしたな??」
「……」
「…心の中では笑っているんだろう!?」
「……」
「ヒ、ヒョッヒョッ恐ろしくて声も出ないか!!」
「……」
「……もういい。なんか笑いもしないし、怖がりもしないし、瞬きもしないし。お前、つまんないな。」
女は何も話さなかった。
怪人はシラケて横を通り過ぎて行った。
女は心の中で思った。
「ひょっとこ面を付けるのは人を楽しませる為なのでは?」
と。
思っただけである。
これは一人の特殊な女の日常風景であった。