第1章 ヒーローとの出会い
千明side
この世界には男と女の他にα・β・Ωという性が存在する。
圧倒的に数が多いのはβ。
αは仕事や勉強、スポーツ、芸術などあらゆる事に対して優秀な人が多い。
所謂完璧な人間が多い。
一方でΩはその反対。
勉強も仕事も、あらゆる事に対して苦手な人が多い。
それに加え、発情期というものが定期的に来る。
発情期にΩから出されるフェロモンにα達は反応し、自我を保てなくなるほど興奮する。
その為、互いに抑制剤を飲んで興奮を抑える人が多い。
もしくはαと番になり、他のαにはフェロモンを感じないようにする人もいる。
ただそれはその人と一生を遂げるという覚悟がいるのだ。
αは何人もの番を作れるが、Ωはその人のみとしか番になれない。
そして、Ωは男であろうが妊娠できるのだ。
そんな世界でΩとして生まれた俺は今_____
「はぁっ…はなせっ!このやろっ!!//」
外出中に発情期が来てしまい、近くにいたαに襲われていた。
抑制剤は生憎持って出てこなかった。
相手の力が強いのか、俺自身の力が出ないのか上手く振り払えない。
雨も降っているせいか人通りも少なく俺の助けを呼ぶ声も雨音にかき消される。
路地裏に連れていかれ、暴れないように両腕を抑えられる。
「大人しくしろよ。Ωなんだろ?匂いで誘惑しておいて何言ってんだよ。気持ちよくしてやるから、な?」
「やめっ……んっ!?//」
キスで口を塞がれてしまった。
普段ならすぐにでも突き飛ばして逃げ出すが、発情期のせいか力が入らない。
嫌なはずなのに気持ちいいと感じてしまう。
こんなの嫌だ……誰か……
神様……
こんな時に小さい頃見た戦闘ものの番組を思い出した。
どんな時でもピンチに駆けつけるヒーローが大好きだった。
助けて……俺のヒーロー……
そう願って目尻から涙が零れた時、誰かが立ち止まった足音がした。
お願い……誰でもいいから……
「たす……けてっ……//」
振り絞って出したその言葉が届いたのか、目の前にいた男がいつの間にか消えていた。
何が起きたのか一瞬のことで分からなかった。