第1章 ヒーローとの出会い
響也side
「金貯めて家探す。」
風呂から上がり、部屋に戻ってきて俺にそう言ってきた。
学校に行かずバイトする気なのだろうか。
学生の本分は勉強。
折角良い高校に通っているのだから学校には行くべきだろう。
それに学生でしか経験できないことだって沢山ある。
「お前がそう決めたのなら俺は何も言わない。ただ学校には行け。」
その言葉を聞いて嫌そうに顔を歪める。
行きたくない理由は何なのだろうか。
いじめ?
けどこの髪色でこれだけ気が強ければ周りも近づかないだろうし、そもそも高校生自体がそんな雰囲気では無い。
偏差値が高く、学生のほとんどがレベルの高い大学に進学するような高校だ。
いじめをする暇があれば勉強するだろう。
「……どうしてあんなに良い高校に通っているのに学校に行きたくないんだ?」
「……入学したくてした訳じゃない。だから別に高校に執着なんてしてない。」
「入学したくてした訳じゃないのに入学できたって事は勉強は元々できるんだろ?……じゃあ何で……」
そんな不良みたいな格好をしているんだと聞こうとしたが、何となく聞いてはいけないと思って言葉を飲み込んだ。
「……何でこんな格好か気になる?……もう別に終わったことだからいいよ。……晃大先輩……さっきの彼氏だった人の好み。高校元々同じで途中から付き合うようになって。半年くらいしてから先輩変わっちゃったんだよね。学校にもあまり来なくなって。俺にも興味無くなってた気がして。それで少しでもまた振り向いて貰えるように好みに近づこうとしてこうなった。結局無駄だったけどさ。」
髪先を指でくりくりと詰まりながら呆れたように話す。
元々あまり関係性は上手く行ってなかったのか。
だからあの時「同棲している」じゃなくて「居候」って言ってたのか。
「無駄では無いと思うけどな。好きな人のために一生懸命になるのは。」
その言葉を聞いて驚いたのか唖然としていた。
そして彼はおかしくなったのか、「ぷっ」と吹き出し照れくさそうに笑い「そっか」と嬉しそうに言った。
その顔が俺の目にはかつて番だった恋人と重なって見えた。
あいつもよくこんな風に照れくさそうに笑っていたな。