第1章 初詣
「初詣?」
「はい。一緒に行きませんか?」
白藤からの提案にすぐ頷けなかったのは、冨岡自身がそういった類の行事を後回しにしてきたからである。
鬼殺隊にとっては盆であれ、正月であれ、鬼が出たとなれば任務が優先されるのは常であった。
加えて、夜は鬼が暗躍する時間。
自ら進んで鬼に喰われに行くようなものである。
「義勇さん?どうかしましたか?……何処かお加減が悪い様でしたら、無理にとは……」
「……いや、そうでは……ない」
歯切れの悪い返事になってしまった事を弁明したいのだが、なかなか上手く言葉に出来ない。
「……いや、違う。気を、悪くしないでくれ。任務ばかりで、正直……初詣に行くような晴れ着を持っていないんだ……」
紛れもない事実である。