第1章 自己紹介
わたしの名前は、折原野々花。
二十五歳。
夫は、小学校以来の友人だった折原静也。
中学、高校、大学。十年間の交際を経て、ゴールイン。
と言っても、中学、高校はともかく、大学時代は、ラブラブチュッチュして、避妊はしていたけど、することはしていたから、結婚して、何が変わるというと、避妊の必要がなくなり、生でできることくらい。
でも、そこに、一つ目の問題が。
それは、夫の早漏。そう、コンドームをつけていたら、20分程度は、維持できていたのに、生だと、5分以内に発射するのでした。
そして、二つ目の問題。
それは、結婚後、半年で何度も中出ししているのに、妊娠しないこと。
わたしは、気になって、夫と、産科に掛かりました。
そこで、紹介された不妊治療専門の医院に行って、検査を受けました。基礎体温、フーナーテスト、子宮卵管造影検査など。
順次、結果がわかりました。
排卵は問題なし。卵管も問題なし。タイミングを計って、排卵に合わせてセックスをしたり、夫の精子の状態を確認したり、いろいろ検査をしました。
そして、フーナーテスト。排卵日の頃にセックスをして12時間以内に検査する必要があって、なかなか難しかったけど、何度かチャレンジして、結果が出た。
免疫因子が原因でした。
夫の精子は、別に問題がないのに、わたしの子宮頚管内の粘液を採取して、調べると、精子が。。。
となると、体外受精しかないということに。
「そこまでして子供が必要かな?」
と、夫が言い出しました。そこまでの意味は、たぶん、金銭的なもの。
不妊治療は非常に高額。
支払いするたびに、夫が顔を顰めていました。
夫も入社二年目の平社員。
わたしも入社二年目の平社員。
蓄えなどありません。
「もう、いいじゃない」
と、冷めた夫の声が・・・。
ある夜。仕事が終わって帰宅すると、夫がリビングで電話中。
「できちゃった婚?いいんじゃないか。俺も、独身時代に、中出ししていたら、アイツの不妊に気が付けていたかもしれないから。できたってことは、いいことさ。俺みたいに、結婚してから不妊だとか、最悪だよ。不妊治療って金がかかるんだよ」
と、誰かと話していた。
最悪・・・。その言葉がわたしを打ちのめした。