第5章 ぼんさんの守護霊
それから何ヶ月か後。
ぼんさんからの指名もあり、私はパソコンのメンテナンスでぼんさん宅に向かうこととなった。
私が指名されたってことは、また幽霊絡みの何かだろうか……と少し不安な気持ちを抱えながらぼんさん宅の玄関を開けたら、そこにはいつものぼんさんの顔があるばかりだった。
「いやぁ、こういう時じゃないと会えないじゃん? だから来てもらっちゃった」
とイタズラっぽい笑みでそう言いながらもちょっとは申し訳なさそうな含みのある口調でぼんさんはそう言ったが、もし幽霊絡みではないのなら私も心当たりがあった。ぼんさんは女性好きなのだ。
「女性スタッフばかり呼んでいたら、ドズルさんに何か言われますよ?」
ぼんさんが女性贔屓しているのは会社中で有名な話だ。ドズルさん曰く、いつかセクハラで訴えられないかヒヤヒヤしているとかなんとか。まぁ冗談だとは思うけれども。
「ふふふ、まぁまぁいいじゃないの。それとも嫌だった?」
上目遣いを使いこなしているというか。甘え上手な男性とはこういうことなんだろう。私はそんな気ないのについ目を逸らしてしまう。
「嫌じゃないです。ただ、心配していたので」
そうなのだ。私はドズルさんの心配を思ってそう言っただけで。
「それじゃあ帰りますね」
機械のメンテナンスも終わり、私は早めに帰ろうとした。ぼんさんといるとつい話し込んでしまう。
そうして私は玄関へ向かったのだが、そこにいた何かを目撃して足が止まってしまった。
「え、どうしたの?」
私の動揺にすぐに気づいてぼんさんが声を掛けてくれる。私はぼんさんを振り向いた。
「あの……玄関、開けてくれますか……?」
私は、玄関にいるのが幽霊だと分かっていても、足が竦んで動けなかったのだ。ぼんさんはますます驚いた。
「え……なになに、怖いやつ?」
とぼんさんは怯えた表情を浮かべたが、私は首を振った。
「いえ、違うと思います……ただちょっと、私からしたら見慣れなくて……」
玄関には大柄な女性が立っていた。最近はドズル社の動画や配信を見ていたから、彼女がどこの幽霊なのかなんとなく分かってはいたのだ。
マリー様だ。