第2章 ドズルさんの守護霊
人に憑いている幽霊……それはつまり守護霊のことを指していたので、私は悪いものではないと思っていた。実際他の人にも、植物が守護霊である場合も視たことはあるし、私は両手を前に振った。
「いえ、悪い花ではないです。私も詳しくはないんですが、多分……」そう言いながら、私はドズルさんの背後にうっすらと視える赤い花をよく観察した。「ハイビスカスの花です」
「ハイビスカス?」
「はい」
私は頷いた。ハイビスカスは、テレビかなんかでもよく見たことがあったからよく分かる花だったのだ。なんでドズルさんに憑いているのかは知らないけど……。
「なんでハイビスカスの花なんだろう?」
とドズルさんが呟く。守護霊というのは大抵、その人にまつわるものや近いもの、親しい誰かが憑くものだから、私も少し不思議には思った。
「沖縄出身とかではないんですか?」
「いいや、違う。僕は大分だから」
「大分……」
南国側ではあるけど、その辺りにハイビスカスの花があるかなんて私は知らない。というか私は東北寄りの田舎の出身者。南国側の方は全然知らないのだ。まぁ、ドズルさんくらいの人柄なら、ひょんなことでハイビスカスに好かれそうではあるが……。
「ただ、ちょっと気になることがあって」私は慎重に言葉を選んだ。「奥さんの守護霊が見当たらないです」