第12章 MENさんの守護霊2
「お礼の件はもう大丈夫だと言ってました」
と私が言い切ると、MENさんがパチクリと瞬きをした。
「えっ……と、なんでしたっけ」
そっか。MENさんにはお礼の話をしてはいないんだった。私は言い方を変えることにした。
「白蛇さんが弱っていたんですが、この前の旅行でネズミを見つけたみたいで。それで、力が充分になった……と思うんです」
これでいいんだよね? と私は白蛇さんに目を向けた。すると次の瞬間、白蛇さんはぱっと人の姿に様変わりし、あっという間に着物を着た人間の男性がMENさんの隣に座っていた。
「このように、力は満たされたでの。感謝を伝えて欲しいのだ」
と白蛇さんは言って。
「白蛇さんは、ありがとうと言っています」
私は、白蛇さんの言葉をそのまま伝えた。MENさんは、やはり自分には見えないものを語られるのは困惑を隠せない様子で頭の後ろをさすりながら、俺は何もしてないんすけどね、と言いながらこんなことを聞いてきた。
「俺、ハムスターがいたって寝言を言ってたみたいなんですよね。ハムスターって、俺の守護霊と関係してたってことっすかね……?」
多分、そうなんだと思うけど……と私が白蛇だった着物の男性を見やると、人の声とは思えない声でシャラシャラと笑った。
「コヤツはワシの体験を夢の中で自身と融合するみたいでの。ネズミを見つけたワシの目を、コヤツも見たのだろうな。まさかネズミをハムスターと思い込むとは予想外だったが」
「白蛇さんがしたことを、MENさんが夢の中で見ていたみたいです」
「俺が、守護霊のしたことを夢で……?」
MENさんが聞き返してくる。にわかには信じ難いことだが、私は頷くしかなかった。
MENさんは私から目を逸らし、ぶつりと一言呟いた。
「じゃあ、ドッチボールの寝言も……」
ドッチボールの寝言? なんだそれは。
私は気になったが、白蛇さんはイタズラっぽく笑うだけで、とうとう何も聞くことは出来なかった。
これは、私もドズル社の配信アーカイブとかを見た方が良さそうだ。