第10章 旅行の話
「色々ありがとうございます。お二人が人気な理由が分かる気がしました」
と私が言うと、おらふくんがクスクスと笑った。
「そうかなぁ? あの社長さんはすぐ決まった? って聞いてくるんやけどな」
「そうなんですか?」
人の多い街中では、彼らのことは名前ではなく何かしらの通称で呼ぶことがあった。おらふくんの言う「社長」とは、間違いなくドズルさんのことだ。
「まぁ、俺たちにはそう言うだけかもね」
とおんりーさんが言うところ、彼ら五人には、私なんかが分かるはずもない信頼関係の強さを感じた。いいな、仲間って。私は心のどこかでそう思った。
「そういえば、この前沖縄旅行に行ったんですよね? 皆さんで旅行って、とても仲が良さそうです」
と私が言うと、あの旅行が初めて五人で行った旅行だったと聞いて驚いた。あまり彼らのことを知らなかったので、私はもっとあちこちで出掛けているのかと思っていたのだ。
「一緒にお泊まりする旅行は沖縄が初めてだったんよ」
「そしたらMENが変な寝言を言って……」
私たちは街中を歩きながら、人通りの少ない道に差し掛かっていた。そこでハッと思い出した。私、白蛇さんに何か言われていたんだった、と。
「……寝言って、なんて言ってたんですか?」
私は二人に聞いてみた。最初に話し出したのはおらふくんだ。
「おらふくん、ハムスターがいたよって急に言ってきたんよ」
「俺は寝てたんだけど、みんな騒いでたから起きて……」
別日も妙な寝言を言っていたとおんりーさんも話し続けていたが、私は「ハムスター」の話に心当たりがあって内心は酷く驚いていた。
(白蛇さんの言っていたことは本当だったのか……)
私は、ネズミの話をMENさんにまだ伝えていなかったのだ。