第37章 緋色の思惑
一度振り向き、彼女に向けて口角を上げて笑みを浮かべる。
お互いの目が真っ直ぐと重なるが、コナンは満足したのか、再び液晶に視線を戻して行った。
その後2人に会話は無く…
それから暫く、2人それぞれのキーボードを叩く音だけが、室内に響き渡っていた。
30分ほど立った頃だろうか…
工藤邸の門の外に人影が映る。
どうやら、1人2人じゃない様だ。
コナンのキーボードの音がふと途切れたので、椛もパソコン作業をやめて、並べられた液晶に目を向けた。
日は落ち、夜の帳が下りた時刻。
液晶には監視カメラが捉えた映像が映っている。
暗くてハッキリとは映っていないが、暗闇でも光に反射する髪色は日本人特有の黒髪ではない。
顔がハッキリ映らなくても、姿形で彼女にはそれが誰かもちろん分かる。
椛(零…)
外門にスーツ姿の男性陣を残して、中庭を抜けると、工藤邸の玄関へ向かってその影は歩いて行った。
「ピンポーン」
ガチャリ
安室「こんばんは…
初めまして…
安室透です。」
優作「はぁ…」
安室「でも…
初めましてじゃ…
ありませんよね?」
当事者達にとって長く、そして新たな一歩を踏み出すであろう夜が…
幕を開ける。