第7章 緋色の友情
閑静な住宅街に、シルバーブルーのキャリーケースを引く音が響く。
青空が広がり心地よい風が吹いている。
絶好のお出かけ日和。
だが今日はオフではなく、『本来の』お仕事の日だ。
目的の場所に着くと、到着を知らせる様にインターフォンを鳴らす。
「ピンポーン♪」
表札には『工藤』の文字。
いつ来ても立派で素晴らしい邸宅だ。
いつか自分もこんな大きくて素敵な家に住んでみたいなと思わずにはいられない。
暫くすると
「どうぞ」
と言うインターフォン越しの声と共に、重厚な門が開く。
立派な中庭を進み玄関へたどり着くと、
タイミングよくこちらが扉をノックする前に玄関扉が開かれた。
昴「おはようございます。」
椛「おはようございます。
今日もよろしくお願いします。
昴さん。」
昴「こちらこそよろしくお願いします。
椛先生。」
朝の挨拶をし、キャリーケースが通りやすいよう扉を広めに開け、その手で彼女の手からキャリーケースを自然に取り、家の中へ運んでくれた。
毎度のことだがその流れはとてもスマートで、英国紳士の片鱗を感じさせる。
2人でリビングに入り、その奥にある目的のキッチンに入る。
慣れた様子で、キャリーケースを開けて荷物を広げて準備を始めた。