第6章 ミッドタウン杯戸
彼女が何者かは分からないけど、
今までの行動や発言を思い返すと、先程言ってた『安室さんの味方』と言う言葉は彼女の『真実』だと思う。
その『言葉』を信じてみようと思う。
というか信じたいと思った。
彼女の正体と本意がまだ見えない状況の中で、そんな不確かな事、信じてみようと思う自分は今の立場を考えるとおかしいのかもしれない。
彼女は何者なのか。
だが正体はきっとそのうち分かるだろう。
今はとにかく『彼女の事』をもっと知りたい。
大切な仲間を失ってから、いくら日々邁進しても決して埋まらないこの虚無間を、埋められる方法が見つかるかもしれない。
そう思った。
気づくと軽く頭を下げる彼女の頭に、軽く自身の左手を添えている自分がいた。
滑らかな髪の感触が心地よい。
ほぼ無意識だった為、驚いた顔をして頭を上げる彼女の表情を見て、現状を理解する。
そのまま思わず固まるが、柔らかく微笑む彼女を見て、自身の表情も緩むのが分かる。
上手く言葉に出来ないが、彼女との出会いで『何かが自分の中』で動き出した気がした。
そんな予感を感じずにはいられない、長いようで短い1日が終わる。