第35章 闇の男爵夫妻
久しぶりの湯船を堪能して、お風呂から上がる。
頭をタオルで拭きながら、リビングに戻ってくると、ちょうど終わったのか、デスクの前で腕を伸ばして伸びをしている彼女の姿が目に映った。
お風呂から出てきた彼に気付き視線を向けると、嬉しそうな顔で彼の名前を呼ぶ。
椛「零…
お風呂出たのね♪
さっぱりした?」
パソコンの前に座り、腕を伸ばしている彼女に近づくと、後ろから抱きしめる。
抱きしめると言っても、彼女は未だ椅子に座っているため、上から包み込むようになってしまうが…
降谷「あぁ、お陰様で。
さっぱりだよ。
パソコン作業は?
終わったのか?」
椛「うん、終わったぁ。
ありがとう、色々。
私もお風呂入ってくる。」
降谷「あぁ、どうぞごゆっくり。」
顔を見上げて彼と目が合うと、とても穏やかや笑みを湛えた彼の姿が目に映る。
まだ少し濡れた髪からは、雫がこぼれ落ちそうになっている。
椛(お風呂上がりの零って、何でこんなにいつも色っぽいんだ…
無駄に色気ダダ漏れすぎる…)
そんな事を考えていると、ついついジッとそのまま彼を見つめてしまう。
『お風呂に入る』と言っていながら、なかなか動かず…
熱い視線があまりにも長く続いたため、流石に声をかける。
降谷「椛?
どうかした?」
椛「ううん、お風呂上がりの零はいつも…
色気が凄いなと思ってみてただけ。」
降谷「何だよそれ…
お風呂上がりに色気放ってるのは、いつも椛の方だろ?」
椛(そんな風に思ってたのか…)
雫が髪からはこぼれ落ちそうな所に手を伸ばす。
指先で触れると、重力に負けた雫が椛の指に伝って流れた。