第35章 闇の男爵夫妻
椛「梅を詰めて塩も全部入ったし。
今日の梅の作業は完了だよ♪
いやぁ〜♪
今日もかわいいね〜梅ちゃん達♪」
2人の目の前には、大きな厚手のビニールに入った完熟梅と、天日塩。
嬉しそうに仕込んだ梅を眺めている椛と、一仕事終わった感があるのか、やり切った感のある清々しい表情を浮かべている降谷。
上がってくる梅酢が漏れない様、しっかり口をしめてキッチンカウンターに並べる。
降谷「こうして見ると中々の量だな…
毎年この時期は毎日、梅仕事やってるんだよな?」
椛「うん、何種類かに分けて漬けるから、日よって漬け方の種類違うけど。
楽しいでしょ?
季節の梅仕事♪」
降谷「古き良き日本の姿そのものだな…
椛先生には本当、頭が下がる思いだよ…」
椛「好きでやってる事だし。
講座でも、みんなでやると楽しいし。
それに、完成したらすっごく美味しいんだよ!
もぉ〜そんなの、梅仕事大好きになるに決まってる♪」
そう言って笑顔を向ける彼女の姿は、降谷が好きになった大きな笑顔そのもので…
出会ってからというもの、何度もその笑顔に心を奪われて来た。
降谷「君は本当に良い女だな…」
椛「えっ?」
ボソッと独り言の様に呟くが、すぐ隣に立っている彼女の耳にはもちろん届いていて…
彼女を見下ろす彼の目はとても穏やかで、優しい色を孕んでいる。
そんな瞳と視線が重なる。
そっと彼女の頬に手を重ねる。
柔らかく温かい頬の温もりに、手のひらが癒される感覚がした。