第31章 エルダーフラワーかローズか否か
椛(はぁ…
確かに、梓さんが言うように、流石にちょっとめんどくさそうかも…)
思わず、正直に思ったことを心の中で小さくぼやく。
だが注文はしてしまっているし、それにカウンターに目を向けると、椛が注文した紅茶の準備と、例の試食の準備を楽しそうに始めている安室の姿。
椛からの視線を感じたのか、作業している手元を見ていた安室の視線が椛と重なる。
目が合うと、ニコリと微笑むポアロのシェフ。
安室の笑顔を見ると、反射的に微笑み返してしまう椛。
ただ…
椛は背中に…
何か突き刺さる様な視線を、引き続き感じていた。
椛(はははっ…
これじゃあ、零もやりずらいだろうし…
次の予定ギリギリまでいるつもりだったけど、お腹を満たしたら、今日は長居はせずに早めにお店を出ようかな。
梓さんにも、気使わせてしまうだろうしな…。)
広げたパソコンの電源を入れて、作業を始める。
仕事を始めた椛に気を使ったのか、パソコン作業する様子を時折、微笑ましく見守りながら、自身も作業を進める安室。
安室(笑った顔が一番好きだけど…
こうして何かに真剣に取り組むときの真面目な表情も、また良いんだよな〜♪)
そして今朝方に、彼が選んだ服を着て、カウンターに座っている彼女の姿を見ていると…
なんとも言えない充足感と…
独占欲が満たされる…
そんな感覚を安室は感じていた。